税務署が相続税申告の調査に入る前に検討するポイントとして以下のような事案をあげました。
- 遺産額が一定額以上の事案
- 流動資産(預貯金や有価証券など)が多い事案
- 被相続人が高額所得者である事案
- 生前に多額の現金出金がある事案
- 貸金庫がある事案
これ以外にも、税務調査の事前項目としてあげられるのが、
“複数の相続人が提出したそれぞれの相続税申告書の内容が異なること”
です。
相続税の申告は、亡くなられた人(被相続人)の保有していた財産や借金などの総額で計算することになりますが、相続人が把握している範囲でしか申告することができません。
“争続”の場合、一方の相続人が被相続人の面倒を見ていたり、同居している。そして、他方の相続人は被相続人と疎遠になっていることがよくあります。そのため、一方の相続人は被相続人の財産や借金などの情報をよく把握し、他方の相続人はほとんど情報を把握していないこととなります。
このような場合、相続人が共同で相続税の申告をすれば問題ないのですが、“争続”下にあるとそれぞれ単独で相続税の申告を行うことがほとんどです。
相続税申告書の提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署であるため、相続人がどこに住んでいようと相続人は同じ税務署に相続税申告書を提出することとなります。
そのため、相続人がそれぞれ単独で相続税の申告をすると、それぞれが把握している被相続人の財産や借金が違うので、異なる相続税申告書が同じ税務署に提出されてしまうこととなります。また、相続税の納税額も異なることとなります。
税務署は異なる内容の相続税申告書を受け取れば、どちらが正しいのかを気にしますし、税務調査を行うきっかけにもなります。そして、情報をもっていない相続人が提出した相続税の申告書はたいていの場合誤っていると考えられますので、追加の納税はもとより、無用な加算税(ペナルティ)がかかることが多くあります。
そのため難しいとは思いますが、“争続”下にあっても、税務調査を避け、無用な納税をなくすために相続税の申告書は共同で提出することが望ましいことになります。