遺産分割については、初めて経験される相続人の方も多いことから、進め方ややり方がわからず、時間だけが過ぎてしまうことが多々あるようです。

そこで今回は、相続が発生した場合に、どのような流れで遺産分割を進めればよいのか、注意点やポイントなどについて解説します。

遺産分割の前にすべきこととは

ご家族の方がお亡くなりになられ、葬儀と四十九日が終わったあたりから徐々に遺産分割の手続きに着手する必要があります。

ただし、いきなり遺産分割を始めるのではなく、その前にしなければならないことが幾つかあります。

遺言書の有無の確認

遺言書が残されている場合については、遺言書の内容が優先されるため、遺産分割協議は不要で、遺言書の内容に沿って遺産の名義変更をするだけです。

遺言書の捜索が不十分で、遺産分割協議をした後になって有効な遺言書が見つかると、最悪の場合すべてやり直しになる恐れもあります。

そのため、遺産分割を始める前に、まずは遺言書の捜索を徹底する必要があるのです。

相続財産の調査

遺産分割をするためには、そのもととなる情報である相続財産の全体像を正しく把握しなければなりません。

預貯金や不動産、株式などのプラスの財産はもちろんの事、借金や保証債務などのマイナスの財産についても相続の対象となるため、後で発覚することのないよう、被相続人の通帳や各種契約書などを確認して漏れのないようにしましょう。

遺産分割を始めた後に新たな相続財産が発覚すると、その都度話し合いがリセットされてしまう恐れもあるため十分注意が必要です。

相続人の調査

遺産分割の話し合いを始めるにあたり、誰が相続人なのかを確定させる必要があります。

普通に考えると、「家族だから調べなくてもわかる」と思うかもしれませんが、認知や養子縁組などについては、家族に秘密にしたままお亡くなりになることもあるため、被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍を取得して、相続人が誰なのかを確認しましょう。

これらの調査確認が済んだところで、ようやく遺産分割に着手できるようになります。

遺産分割協議とは

遺産分割については、相続人全員で話し合って、それぞれの相続分について決める必要があります。

この話し合いのことを「遺産分割協議」といい、実家など一箇所に相続人全員が集合して、対面で話し合いをすることもありますが、相続人が遠方に住んでいたり、面識があまりないような場合については、書面やメール、電話だけのやり取りで決着をつける場合もあります。

遺産分割協議はあくまで任意の話し合いなので、全員の意見が反発してしまうと、強制的に遺産分割を決めることができません。

どうしても話し合いでの解決が難しい場合については、次のステップに進みます。

遺産分割調停で再度話し合う

遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合は、次のステップとして家庭裁判所における遺産分割調停へと進みます。いきなり審判に訴えることもできなくはありませんが、よほどの事情がない限り、先に調停をすることになります。

遺産分割調停とは、簡単にいうと、裁判所に間に入ってもらって再度話し合うことです。遺産分割協議とは違い、家庭裁判所に申し立てをした上で、期日に裁判所に出廷して裁判官や調停委員立ち会いのもと、遺産分割の着地点を探っていきます。

調停委員は何をしてくれるのか

調停委員とは、調停において専門家としての立場から、両者に適切な助言をして和解するよう調整を図ってくれる人のことです。

弁護士と役割は似ていますが、依頼人の利益を最優先して動く弁護士に対し、調停委員はあくまで「中立」な立場にあるため、どちらの味方というわけではなく、双方にとって納得できる解決策を探って説得してくれます。

ただし、遺産分割調停はあくまで話し合いのため、相手がこちらの遺産分割案に同意してくれなければ、次のステップに移行することになります。

遺産分割調停がまとまった場合は、家庭裁判所が合意内容を記載した「調停調書」という書面を作成することになります。調停調書は判決と同じ効力を持つので、後で相手方が調停調書の内容に応じなければ、強制執行によって強制的に遺産分割することも可能です。

遺産分割審判

遺産分割調停でも決着がつかない場合は、遺産分割審判へと移行する場合があります。
調停は当事者の話し合いを裁判所が仲裁して和解することを目的としていますが、審判は双方の主張を総合的に勘案して、裁判官が遺産分割について一方的に決定するのです。

審判については1回の審判では終わらず、何か月かごとに開催されることが一般的なので、すべての主張や証拠が出尽くして裁判所が審判を下すまでに数年もかかる場合もあります。

審判に不服がある場合は2週間以内に即時抗告ができ、高等裁判所で審理されます。

審判が確定したら、ようやく審判の内容に沿って遺産を分割することになります。

このように、遺産分割は、解決までに非常に長い時間が必要となることがあります。

四ツ橋総合法律事務所が遺産分割を徹底サポート

遺産分割協議がまとまらない原因の多くは、法律的な争いとなることはもちろんのこと、感情のこじれなど、法律論以外の感情論でもめてしまうケースもよくあります。

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