遺産分割協議によって相続人ごとに相続する財産が決まったら、財産の名義を被相続人のものから相続人へと変更する必要があります。

名義変更をしないと、のちにさまざまな不都合が生じるため注意が必要です。

そこで今回は、相続によって名義変更が必要な預貯金や不動産の、具体的な手続き方法について解説します。

預貯金口座について

被相続人名義の預貯金口座については、本人の死亡を銀行に伝えた時点で口座が凍結されるため、名義変更手続きを完了するまでについては、原則として自由にお金を出し入れすることができなくなります。

預貯金口座の名義変更手続きは、被相続人名義の銀行口座を解約して、相続人名義の口座に残高を移してもらうという流れです。

預貯金口座の名義変更に必要な書類

預貯金口座の名義変更には、概ね次のような書類が必要になります。

  • 銀行所定の名義変更届
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書

また、遺産分割協議書や遺言書の添付が必要になる場合もあります。

預貯金口座の名義変更のポイント

預貯金口座の名義変更については、書類を揃えて銀行に提出すればよいので、手続きとしてはそこまで複雑ではありません。

ただ、提出する書類には、相続人全員の署名捺印や印鑑証明書などが必要になるため、遺産分割協議が確定した上で、すべての相続人の協力が必要になります。(※遺言書で遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が単独で手続き可能)

また、銀行の窓口は平日の昼間しか空いていないため、仕事をしている相続人の方にとっては、面倒な手続きと言えるかもしれません。

名義変更手続きをしないと、被相続人名義の口座のお金を自由に使うことができないので、遺産分割協議が確定したら、速やかに名義変更手続きに着手しましょう。

不動産について

不動産を相続したら、不動産登記の名義変更(相続登記)が必要です。

ただ、名義変更手続きをしないと自由に使用できない預貯金口座とは違い、不動産についてはすぐに名義変更をしなくても、使用自体に大きな問題は生じないため、相続しても名義変更をせずに放置する相続人も少なくありません。

不動産の名義変更手続きを放置すると、次のような問題が生じるため注意が必要です。

二次相続で権利関係が複雑に

不動産の名義変更をしないまま、相続人が亡くなってしまうと、二次相続が発生します。

不動産の名義変更手続きが完了していれば、二次相続の相続人の書類だけ集めれば再び名義変更できますが、一次相続で名義変更手続きがされていないと、その分の書類についてもすべて回収しなければなりません。
当時の遺言書や遺産分割協議書が残っていて、相続人の協力が得られればよいのですが、相続から時間が経ちすぎていると、協力がなかなか得られなかったり、不動産の相続人の認識が違ってしまうこともあり、大きなトラブルに発展する可能性もあります。

不動産の所有者については、不動産の登記名義を変更しないと、他人に対して対抗することができないので、相続によって不動産を取得したら、できる限り速やかに登記名義を変更する必要があるのです。

売却や担保に入れられない

不動産の登記名義を変更しないと、相続人が不動産の所有者であることを客観的に証明することができません。

そのため、相続不動産を売却したり、担保に入れてお金を借り入れたりする場合については、必ず登記名義を変更する必要があります。

相続不動産が賃貸アパートの場合についても、登記名義を変更した上で、賃借人に対して自らが新賃貸人であることを示して、家賃の振込先口座の変更を通知するのが、適切なやり方です。

相続登記の費用について

不動産の名義変更手続きである相続登記をする際には、登録免許税という税金を納めなければなりません。

登録免許税については、次の計算式で計算します。
不動産の固定資産税評価額×0.004=登録免許税

例えば、固定資産税評価額1,000万円の土地を相続した場合については、4万円の登録免許税がかかります。高く感じるかもしれませんが、不動産を売買した際に発生する登録免許税は2%なので、相続については優遇されているのです。

相続登記の必要書類

相続登記には、概ね次のような書類を法務局に提出して行います。

  • 登記申請書
  • 対象不動産の登記事項証明書(法務局で取得)
  • 被相続人の住民票の除票など本籍地の記載があるもの
  • 被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本一式
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書または遺言書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 対象不動産を相続する相続人の住民票
  • 固定資産税評価証明書(都税事務所、役所などで取得)

相続登記はプロに任せた方が確実

このように相続登記に必要な書類は多岐にわたるため、相続人の方が自ら行うと何度も法務局に足を運ぶことになる可能性があります。

相続発生後、当事務所にご依頼いただければ、財産調査や相続人調査から、遺産分割協議のサポート、相続財産の名義変更までトータルでサポートいたします。

相続登記についても、連携している司法書士がおりますので、ご依頼者様の手を煩わせることなく、ワンストップにて対応することが可能です。

また、当事務所は相続税に強い税理士とも提携しているため、相続税申告についても同時に対応できます。ご自身で無理をされず、相続が発生したらできる限りお早めにご相談ください。

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