ご依頼の背景

父の死後、長女から依頼者に対し、父が全財産を長女に相続させる内容の公正証書遺言を作成していたと突然告げられました。しかし、遺言書の作成日付を確認すると、その当時父は認知症のため、意思疎通が困難な状況でした。また、母の相続の際、依頼者と父が協力して長女と遺産分割協議を成立させたにもかかわらず、その内容が不満だったと記載されているなど、遺言書が父の意思に基づいて作成されたかどうかについて不審な点がありました。

依頼人の主張

父が遺言書を作成した当時、父は認知症のため意思疎通が困難であり判断能力がなかったため、遺言書は父の意思に基づくものとはいえず無効であると考えている。父の遺産の中には、依頼者が住む土地建物も含まれているので、遺言を無効とした上で、土地建物を依頼者が単独相続したい。

サポートの流れ

父が遺言書を作成した当時入院していた病院を訪問したうえで担当医と面談し、父の当時の状態を確認しました。すると、父が認知症のため、見当識障害や記憶障害があり、意思疎通が困難であったことが確認できました。そこで、公正証書遺言の無効確認を求めて訴訟を提起しました。

結果

訴訟提起後、父が当時入院していた病院からカルテを取り寄せる手続きを行いました。提出されたカルテを確認すると、遺言書を作成した前後において、母が既に亡くなっていたにもかかわらず母が生きているような話をするなど、明らかに父が意思疎通できていないような記述が散見され、また高度の見当識障害や意識障害があるとの診断結果が記載されていました。そこで、カルテを証拠として提出し父に判断能力がないことの根拠となる記載を詳細に主張し、また、母の遺産分割の際の資料を証拠として提出するなど遺言書の記載内容の不当性についても主張しました。その結果、第1審で公正証書遺言の無効が認められ、長女は控訴しましたが、控訴審では、公正証書遺言が無効であることを前提に、土地建物の名義を依頼者に移す内容での和解が成立しました。